『水平線上の陰謀(ストラテジー)』のネタバレあらすじ
15年前のクルーズ船沈没事故
15年前にクルーズ船の沈没事故が起こる。死亡したのは船長の沖田と三等航海士。しかしその事故は、八代グループの八代一家がわざと起こしたものだった。
目的はクルーズ船にかけていた保険金の詐取と、沖田船長の殺害。
当時副船長だった海藤渡(かいどうわたる)は、船長の座を奪うためその計画に加担していた。
「アフロディーテ号」の処女航海パーティ
そして15年後の現在。八代グループが造った「アフロディーテ号」の処女航海パーティが開かれる。その船長はもちろん、かつて沖田船長を排斥した海藤渡だ。
コナンたちは、八代グループに招待された鈴木財閥の令嬢・園子の連れとして、アフロディーテ号のパーティに参加する。
そのパーティには、かつての沈没事故で亡くなった三等航海士の息子・日下ひろなりと、殺された沖田船長の娘・秋吉美波子も参加していた。
少年探偵団の贈り物とかくれんぼ
航海を楽しんでいた少年探偵団たちは、空手の都大会で優勝した蘭のために、貝殻で作ったブレスレットをこっそりプレゼントすることにする。
光彦が蘭のパーカーにプレゼントをしのばせるが、蘭は一向に気付かず、そしてそのまま、みんなでかくれんぼをすることになる。
鬼になった園子がみんなを探しに地下へ行くのだが、そこで日下ひろなりに気絶させられ、霊安室に監禁されてしまう。
日下ひろなりの復讐
日下ひろなりは、その地下に八代グループの会長・八代延太郎を呼び出しており、三等航海士だった父親のかたきとして海に落として殺害。その後に八代延太郎の妻・八代貴江も客室で刺殺する。
こうして父親の復讐を遂げた日下だったが、この殺人には思わぬ出来事が存在していた。
コナンの事件解決
園子を霊安室から助け出し、客室で八代貴江の遺体が見つかると、コナンがさっそく事件の解決に乗り出す。
とんとん拍子で日下が犯人であることを突き止め、阿笠博士の声で事件を解いて日下を追いつめるが、彼は船に仕掛けた爆弾を使って逃亡を図る。
小型船で船外に逃亡した日下は、コナン率いる少年探偵団に追いかけられて捕らえられるが、アフロディーテ号は爆弾によって沈没しはじめる。
沈没するアフロディーテ号
爆弾によって沈没しはじめるアフロディーテ号。
乗員乗客は全員退避命令が出て、船に残された蘭たちは避難ボートへ乗り込むが、なぜか毛利小五郎だけは別の船で行くと言う。
そして蘭も少年探偵団が作ってくれたというプレゼントがポケットから無くなっているいることに気づき、園子と阿笠博士だけをボートに乗せて、一人でアフロディーテ号へと戻っていく。
蘭のプレゼントとコナンの胸騒ぎ
プレゼントは、蘭がかくれんぼをしていた倉庫の中にあった。しかし、大きく揺れる船のせいで頭を打ち、蘭は倉庫の中で気絶してしまう。
同じころ、船外にいたコナンは事件のミスリードに気づき、また嫌な胸騒ぎを覚えたため、水上バイクでアフロディーテ号へと戻っていく。
秋吉美波子の復讐
乗員を全て退避させた海藤船長が、最後に自分も避難しようと操舵室を離れようとしたところ、15年前に殺害された沖田船長の娘・秋吉美波子が海藤の前に現れる。
彼女は殺された父親のかたきを討つため、スピアガンを手に海藤に迫り、彼に照準を合わせて殺そうとする。
毛利小五郎の推理
しかし、そんな秋吉を止めに入ったのは毛利小五郎だった。構わず小五郎にスピアガンを撃とうとする彼女だが、針は発射しなかった。毛利小五郎は秋吉美波子の犯行を推理し、事前に武器を使えなくしていたのだ。
一連の事件の真犯人は秋吉美奈子だった。彼女は日下の犯行を利用して、八代夫妻とその息子・八代英人を殺害。日下が自分の犯行だと思わせるように仕向けた。
実際に手を下したのは秋吉で、日下は八代延太郎を海上に投げ飛ばしはしたが、直接的には誰も殺していなかった。
日下が犯人に仕立て上げられた理由は、彼がパソコンの中で沖田船長のことを「船と運命を共にした時代錯誤の男」と書いてあったため。娘の秋吉美奈子は日下をも恨んでいたのだ。
こうしたことが毛利小五郎の推理で明かされる。無線機でこれを聞いていたコナンは、途中で少しだけ推理を修正しながらも、「名推理だったぜ、おっちゃん」と心の中で称賛している。
蘭の救出とラストシーン
事件は解決したが、気絶した蘭がまだ船に残っている。
コナンは、むかし蘭としたかくれんぼを思い出しながら、蘭の居所を推理して突き止める。
沈没間近の船に救助ヘリが到着し、それに助けられた小五郎と蘭だが、コナンだけが船に残されてしまう。
決死のジャンプで小五郎に手を伸ばしたが掴めず、あわや落下というところ蘭に手を掴まれる。しかしその手も滑ってしまい、もはやこれまでと思った瞬間、少年探偵団が蘭に贈ったブレスレットを掴むことで、コナンは九死に一生を得る。
ラストは、コナンたちが別の船で本島へと帰っており、少年探偵団が修理したブレスレットをネックレスにして、蘭に渡す場面で終わる。
『水平線上の陰謀(ストラテジー)』の犯人
犯人:日下ひろなり
26歳のシナリオライター。15年前のクルーズ船沈没事故で亡くなった三等航海士の息子。その復讐で八代親子の殺害を計画する。八代延太郎を地下に呼び出して海に投げ飛ばし、八代貴江を刺殺。しかし犯行の計画はずさんなもので、取材相手であり真犯人の秋吉美波子にかえって利用されてしまう。園子を気絶させて霊安室に監禁したのも日下の仕業。
犯行の概要
八代延太郎の 殺害方法 |
午前10時15分に、アフロディーテ号の地下に呼び出し、ハッチを開けて、もみ合いになりながら海へ落とした。 |
八代貴江の 殺害方法 |
マスターキーを使って貴江夫人のいる604号室の客室へ入り刺殺した。 |
アリバイ工作 | 午前10時から30分間、自分の客室の電話を使って秋吉美奈子と電話をしていた。 |
トリック | 電話でシナリオを読み上げると秋吉に言い、録音していたテープレコーダーを受話器のそばに置き、部屋から出て犯行に及んだ。 |
証拠 |
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真犯人:秋吉美波子
32歳の八代商船設計士。15年前のクルーズ船沈没事故で殺された沖田船長の娘で、本作の真犯人。父親の真の死因は知らなかったが、取材で八代親子のことを執拗に聞いてくる日下と出会い、彼のパソコンを覗いたところクルーズ船沈没事故の真相に触れる。事件の詳しい真相を八代英人から聞き出すと、その後彼をスタングレネードで事故死に見せかけて殺し、八代夫妻も日下より前に殺害した。毛利小五郎の妻・妃英理に容姿が似ている。
犯行の概要
八代延太郎の 殺害方法 |
日下ともみ合っていた八代延太郎が、日下の首を絞めて馬乗りになったところを背後から果物ナイフで刺して殺害した。力が緩んだ八代延太郎は、巴投げの要領で日下に投げ飛ばされて海へ落ちて死亡した。 |
八代貴江の 殺害方法 |
まず客室にいた八代貴江を殴って気絶させ、自分が貴江夫人になりすます。そこを日下に襲わせて、もみ合っている振りをし自分の腹を刺して血のりを出し、日下に八代貴江を殺害したと思わせた。それから気絶していた八代を連れだし、実際に刺殺した。犯行に使用した血のりは拭き取ったが、鑑識に見つけられている。 |
アリバイ工作 | 午前10時から30分間、自分の客室の電話を使って日下ひろなりと電話をしていた。 |
トリック | 電話でシナリオを読み上げると秋吉に言い、録音していたテープレコーダーを受話器のそばに置き、部屋から出た日下のトリックを逆に利用して、その間に犯行に及んだ。 |
『水平線上の陰謀(ストラテジー)』の見どころ
毛利小五郎のかっこよさ
本作は毛利小五郎のかっこよさが見どころ♪
いつもは頼りなくて、コナンにすぐ麻酔銃を撃たれ「ほにゃぁ」とか「はへぇ」とか言っている小五郎ちゃんですが、今回は自力で、しかもコナンよりも早く真犯人へと辿り着きます。
その理由は、真犯人の秋吉美波子の容姿が、妻の妃英理に似ているから。漫画でも妃英理が絡む事件だと、いつもより推理力ましましになっていたりします。
妃英理のプロフィール [caption id="attachment_2076" align="aligncenter" width="377"] サムネイル画像ともに出典:読売テレビ公式サイトより[/caption] 年齢[…]
ダンディな名言はきまくりの小五郎
真犯人の秋吉と対峙するときの小五郎はノリに乗っていて、渋めの名言の連発です。
真相を解き明かすのが探偵の性なんでね
といつものぐうたらっぷりを棚に上げた発言をしてみたり。
不意打ちを片手で防いで、
俺は女とは戦わねぇ主義だが・・・
とキメ顔で言ってみたり。
秋吉に「よっぽど憎い女に似ていたのね」と言われたところ、
「その逆だよ。あんたがあいつに似てたから、犯人があんたじゃなきゃいいと思って無実の証拠を集めようとしたからこうなっちまったんだよ」
と返したりしています。
「落として上げる」。これが小五郎ちゃんのやり方(68巻参照)なので、いつもは妻・妃英理の悪口ばかり言っていますが、本作では上げ上げの毛利小五郎です。妃英理のいないところでこういう姿を見せるところが小五郎ちゃんらしい・・・。
漫画でもアニメでも、ほとんど良いところを見せない毛利小五郎ですが、この映画ではかっこいい姿が見られるので、そのギャップが楽しめる作品になっています♪
蘭と新一の小学校時代
蘭と新一の小学校時代が垣間見えるのも、この映画の見どころです。
蘭と友達がかくれんぼをしていて、誰も見つけられなかったところを新一が見つけるというおはなし。
子ども蘭「ねえ、顔、あかいよ」
子ども新一「何言ってんだバーロ、夕日のせいだっつうの」
という可愛らしいやり取りが見られる場面もあります。
かつては新一が蘭を見つけたので、今度は蘭が小さくなってしまった新一を見つける番ですね♪
園子と灰原のペア
少年探偵団と園子、蘭のメンバーでかくれんぼをすることになり、鬼になったのは園子と灰原哀。
異色のペアなので、二人の会話シーンはかなりレアで面白いです。
灰原に敬語を使う園子
灰原「私は上を探すから、あなたは下を探して」
園子「あ、はい!」
灰原が大人っぽすぎるため、無意識に敬語を使ってしまう園子の様子が笑えます。
逆にいうと、灰原を年上だと感じている園子の直感力恐るべしといったところでしょうか。
第76巻で園子が灰原のことを「わたしあの子ちょっと苦手・・・」と言っていることからも、本作の二人の会話は貴重なものだと思います♪
『水平線上の陰謀(ストラテジー)』の考察
『水平線上の陰謀』というタイトルに隠された2つの意味
本作のタイトルにある「水平線上の陰謀」という言葉。
映画を観ていくと、日下と秋吉が復讐のために八坂親子を殺し、豪華客船を沈没させようという陰謀であることが分かります。
つまり、水平線上にある豪華客船を沈没させ、そこで憎い相手を殺そうという「水平線上の陰謀」なわけですね。
しかし、『水平線上の陰謀』というタイトルをじっくり考えると、もうひとつの陰謀も示唆していることが読み取れるのですっ。
「第一八代丸」をめぐる陰謀
もうひとつの陰謀。それは、「第一八代丸」をめぐる陰謀です。
八代親子は「第一八代丸」にかけた保険金を詐取するために沈没させる計画を練ります。
そこに加えて、ストライキなどを起こして目障りだった船長の沖田を殺してしまおうとするのです。この計画に加担したのが、当時副船長だった海藤渡。現・アフロディーテ号の船長です。
つまり、八代親子が「第一八代丸」を沈没させ、沖田船長を殺そうとしたのが、もうひとつの陰謀ということです。
タイトルに込められた2つの陰謀
こうして見てみると、本作のタイトルには2つの意味が込められていることが分かります。
それは、
- 15年前に企てられた「第一八代丸」の沈没をめぐる時間的な意味での「水平線上の」陰謀
- 現在進行形で企てられた「アフロディーテ号」の沈没をめぐる空間的な意味での「水平線上の」陰謀
の2つです。
この2つの陰謀が交錯し、加害者と被害者が入れ替わる二重構造を持っている事件が『水平線上の陰謀』では描かれていて、本作の見どころポイントとなっています♪
サッカーボールとバレーボール
かくれんぼをしたとき、蘭が「コナン君ずっとサッカーボール蹴ってたでしょ?」と言うセリフがあります。
しかし、コナンが蹴っていたのはサッカーボールではなくバレーボール。なので、音だけが聞こえる場所に蘭が隠れていたことが分かります。
このシーンの少し前に、蘭はバレーボールを蹴っているコナンを見ていましたが、距離が少し遠く、そのうえボールはずっと回転しており、さらにコナンがサッカーチーム「東京スピリッツ」のレプリカユニフォームを着ていたので、コナンが蹴っていたのはサッカーボールだと思ったのでしょう。
あそこで音だけが聞こえる場所はそう多くなかったので、コナンは終盤の短い時間でも蘭を助けることができたんですね♪
日下ひろなりの「髪の毛」
個人的に、本作の事件で一番分かりにくかったのは、日下ひろなりの髪の毛に付いていた「血」です。
日下ひろなりが事件の犯人である証拠として、コナンがみんなの前で指摘します。
「あれれ~どうしたのお兄さん?赤い髪の毛のなかに黒っぽいのが混じってるよ?それってもしかして、血じゃない?そっかー、お兄さん悪いことしたあと鏡を見たけど、髪の毛の色が血の色に似てたんで血が付いてることに気が付かなかったんだね。でも覚えておいた方がいいよ、血液は時間が経つと固まって、色が変化するんだから。」
この場面を観たときは納得だったのですが、問題は映画終盤になってから。
真犯人は秋吉美波子であることが分かり、全ての犯行は彼女の仕業だったのです。そこで思いました。
日下の髪に付いていたのは八代延太郎の血
結論から言うと、日下に付いていた血は「秋吉が八代延太郎の背中を刺したときに出た血」です。
勝手に八代貴江の血だと思っていたので、ここはよく考えないと分からない部分でした。
しかも、その血の付き方が偶然すぎるので、日下もまさか髪の毛に血が付いているとは思わず、洗い流せなかったのでしょう。どうして八代延太郎の血なのかは下にまとめてみました。
秋吉美波子の犯行おさらい
まず、秋吉美波子の犯行をおさらいしておくと、
- 客室にいた八代貴江を殴って気絶させ風呂に放置
- 地下で日下と取っ組み合っていた八代延太郎の背中を刺す
- 客室に戻って貴江夫人になりすまし、そこを日下に襲わせ、もみ合っている振りをして自分の腹を刺し血のりを出す
- 勘違いした日下が逃走してから八代貴江を殺害
という順序です。
つまり、日下が貴江夫人(になりすました秋吉美波子)を刺したときは、秋吉の用意した血のりが出ただけで、誰の血も流れていないわけなんですね。
とすれば、日下の髪の毛に付いていた血は、八代延太郎と取っ組み合っているときに付いたとしか考えられません。そのため、日下の髪に付いている血は八代延太郎のものです。
偶然付いた血
しかし何度映画を見返しても、日下が八代延太郎と取っ組み合っているときに、血は流れていません。
ここで血が流れたのは、八代延太郎の背中を秋吉美波子が刺したとき。つまり、この背中から流れる血が、偶然日下の髪の毛に付いたわけですね。
日下は八代延太郎の流血を見ておらず、背中を刺されたところも見ていないので、まさか自分に血が付いているとは思わなかったのでしょう。
ただ鑑識によれば、この付近には血痕があった模様。日下が気付いていないというのも考えにくいですが、人を殺した後、慌てて現場を立ち去ったのであれば、見逃してしまったのかもしれません。
じっさい彼は、八代貴江になりすました秋吉美波子と取っ組み合ったのに彼女に気付かず、血のりを出して死んだふりをされても気付かず、生死も確認せずに部屋を立ち去るくらいなので、十分にあり得ると思います。日下ひろなりは、歴代映画の中でもトップクラスのおまぬけ犯かもしれません。
以上、『水平線上の隠謀』のネタバレあらすじから考察まで見てきました。ここではほかのコナン映画の考察や、漫画の事件などもまとめているので、ぜひ読んでいって下さい。それでは♪